100年ビジョンで社員・家族・顧客・株主・取引先と共に歩む
*このインタビュー記事は株式会社SACCOが運営する「coki」によるものです。
日本企業の99%以上を占める中小企業。株式会社FISソリューションズはその中小企業に特化してITを活用したコンサルティングを展開している会社です。
代表取締役の山口勝宏さんが2007年に創業。OA機器の販売からスタートし、その後通信情報コンサルティングの株式会社フォーバルのグループ会社となり事業を発展させてきました。そのフォーバルグループとの出会いがきっかけとなり、山口さんはステークホルダーと向き合う経営に真剣に取り組むことになります。
今回は山口社長がステークホルダーと向き合うことで生まれた変化や、株式会社FISソリューションズを取り巻くステークホルダーについてお話を伺いました。
注力している事業は「アイコン」
―まずは株式会社FISソリューションズの事業内容について教えてください。
弊社はOA機器の販売からスタートした会社で、現在でも営業利益の80%ほどを占めています。ただ販売というのは売った後は、なかなかお客さまと向き合うことが難しい業種です。そのため今、力を入れているのはコンサルティングです。
現在65名の社員がおりますが、OA機器の販売を直接担当しているのは6名。残りの営業メンバーはお客さまとの接点作りに関わる仕事をしています。特にメインになっているのは15名ほどで結成している「アイコン」というITコンサルタントチームです。
毎月定額の料金で中小企業に定期訪問をしてITを中心とした経営の相談に乗り、解決策を提案し、お客さまの抱えている問題を解決していくというものです。大企業にはIT環境整備のための専任スタッフがいますが、専任を置いていない中小企業では環境整備が遅れがちになります。経営において情報の重要性がますます高くなる中で、お客さまに本業に専念していただけるIT環境を整え、その結果お客さまの利益に貢献することを目的にしています。
この「アイコン」というサービスはフォーバルグループ全体で取り組んでいるサービスで、ITコンサルティングにとどまらず、グループ会社の協力を得ながらお客さまのさまざまな問題解決に当たっています。そこが弊社の強みでもあります。
企業のあり方を考えるきっかけをくれたフォーバルグループ
―フォーバルグループに入った経緯を教えてください。
株式会社FISソリューションズの前身は私が設立したポパイコンサルティングサービス株式会社の通信事業部です。株式会社フォーバルテレコムからOA機器販売をグループ会社として展開しないかというお誘いをいただいて、設立したその年にフォーバルテレコムに事業譲渡し、私も経営に参画しながら事業を継続することになりました。
事業を立ち上げたばかりで資金も信用もなく売り上げが上がっても資金が不足する状態で、このままでは社員の幸せにならないのではないかと思っていたところ、現在のフォーバルテレコム社長の谷井(当時は常務)とお会いする中で最終的に決断しました。フォーバルグループの一員になれたことは本当に良かったと思います。
―どのような点で良かったと感じていますか?
経営を学ばせていただいたという点が一番ですね。株式会社フォーバルの代表取締役会長の大久保からは本当に多くのことを学ばせていただきました。大久保は一般社団法人公益資本主義推進協議会(PICC)という団体の発起人でもあって、ステークホルダー全体への貢献を重視する公益資本主義という考え方を社会に発信する取り組みもしています。大久保のもとでもっと経営について学びたいという思いからPICCにも入会しました。
フォーバルグループの経営理念は「社員・家族・顧客・株主・取引先と共に歩み、社会価値創出を通して、それぞれに幸せを分配することを目指す」というものです。幸せの分配には、社員・家族・顧客・株主・取引先という順序を設けています。これは社員の犠牲の上に成り立つ増収増益は企業が目指すべき姿ではなく、お客さまを不幸にして自分たちだけが幸せになることはあり得ない。またお客さまを幸せにするためには、取引先も大切にしなければならないとの思いが込められています。
弊社でもステークホルダーを大切にする制度を作り始め、まずは社員を大切にすることを徹底して実践しました。その結果、退職者が減って人が育つという環境ができてきて、経営にも確実に良い影響を与えています。ステークホルダーと向き合うことの大切さを知り、また、経営者の考え方で会社は変わると痛感しました。
FISビジョン
―FISソリューションズが追い求める理想の会社像はありますか?
「すばらしい会社」になることです。ステークホルダーがそれぞれの価値観で会社を見たときに全員が「すばらしい会社」と言える存在であること。これが弊社のすばらしい会社の定義です。今、弊社ではビジョンを社員全員で共有し、同じベクトルに向かって進んでいこうとしています。まずは社員全員が「FISソリューションズはすばらしい会社である」と宣言できる会社になり、そして世の中にある全ての中小企業がすばらしい会社であるために必要とされる存在になることを目指しています。
株式会社FISソリューションズのステークホルダー
社員・家族に対する思い
社員全員に感謝の思いがありますし、彼らを幸せにするために会社は機能するべきだと思っています。また社員の家族の幸せがなければ、社員が力を発揮することはできません。だから家族を含めて彼ら全てを幸せにする責任が経営者にはあると考えています。
社員・家族との向き合い方
名前をあげるとするとまずは高橋智也さんです。営業でトップセールスに入っていて、創業当時から苦楽を共にしてきたメンバーです。もう15年ぐらい一緒にやっているんですけど、よく頑張ってくれたなと思っています。FISをすばらしい会社にしていこうという目標とするところを共有してくれて、常に会社のことを考えて仕事をしてくれている。私は経営者として目先の数字にフォーカスしてしまうことがあるのですが、高橋さんはしっかりと会社全体のことを考えて、ブレずにいてくれる。本当にありがたい存在です。これからも一緒に会社を作っていきたいと思っています。
新井も前の会社で一緒だったメンバーです。営業のトップセールスです。この5年くらいでトップの座を譲ったのは1、2回ぐらい。そのパフォーマンスを生み出しているのは凡事徹底ということに尽きると思います。お客さまにまめに連絡する、早く対応する、商談数を増やすなど、そういう当たり前のことを徹底している。最近は営業マンとして成績を上げることだけではなく、全体のことを考えながら仕事をするという成長も見えて、非常に嬉しいしありがたい。
個人の数字も出しながら全体も見ていかなければならないので、大変だと思います。将来についての話はたまにするのですが、30年後の自分をどう考えているかというビジョンについて、ゆっくり話をしたいなと思っています。
家庭がある程度しっかりしていないと、会社でのパフォーマンスを上げていくのは難しい。私自身もそうですが、家族の応援なしには会社は成り立ちません。だから社員の家族も会社を支えてくれる大切な存在です。会社としては、誕生日にプレゼントを贈らせていただいたり、お子さんには本に興味を持ってもらえたらという思いから誕生月に図書カードを贈っています。ちょっとしたことになりますが、ご家族の方にも会社とのつながりを感じてもらえればという気持ちを込めてそのようなことを実施しています。
お客さまであり経営者仲間でもある方々に対する思い
PICCの活動を通して知り合った方々とのお付き合いが多く、顧客であり経営者仲間であるという関係を築かせていただいています。今回この取材を受けるに当たり、弊社を紹介いただいたPICC東京支部長の大塚実業株式会社の大塚さんは、経営者として尊敬している先輩であると同時に弊社のお客さまでもあります。また一緒に副支部長として活動している株式会社トライキッツの河合さんも経営者仲間であり大切なお客さまです。PICCの仲間であり仕事上でもお付き合いいただけるのはすごくありがたいです。
お客様との向き合い方
東京都豊島区にあるLEDの販売をしている会社で、創業当時からお世話になり本当に感謝しています。コーウェルさんのIT設備のほとんどを弊社から導入いただいていたのですが、最近移転をされたとき、仕事上の関係で今回は別の会社から設備を導入することを、社長の宮本さんから前もってご連絡いただいたんですね。そのご配慮もとてもありがたかったなと思っています。私がPICCに入会したとき、宮本さんは私にないところを数多く持っていてたいへんリスペクトしています。未来やビジョンを語ることができ、兄貴肌な性分で人を惹きつける魅力を持っていらっしゃる。私は今でこそビジョンを語れるようになったのですけれど、以前は目の前の数字を追うような感じだった。宮本さんのやり方やビジョンの語り方にすごく感化されました。いろいろなお話を聞かせてくださったことに本当に感謝しています。最近あまりお話しできていないので、今の宮本さんのビジョンをまた改めてお聞きしたいなと思っています。
國武さんは不動産業のレジェンドグループ会長で、伝説塾という起業家を養成するための経営塾を開催しています。私も参加していたのですが、同期で何か一緒にできないかと常に考えてくれて、実践的に学ぶことができ、非常に有意義な勉強ができました。仕事上でもお付き合いしていますが、國武さんからは弊社に対していつも率直なご意見をいただけるので、大変ありがたいなと思っています。
私は國武さんにも人間的な魅力をすごく感じていて、大塚実業の大塚さんやコーウェルの宮本さんにも同じような魅力を感じるんですが、どうしたらそんなに人間力ってつくんだろうと思い、いつも勉強させていただいていております。
取引先との向き合い方
弊社は株式会社フォーバルテレコムの100%子会社です。M&Aでフォーバルグループに参画したのですが、もしフォーバルグループに入っていなかったら経営に関してこれほど多くのことを学ぶことはできなかったと思っています。株式会社フォーバルの大久保会長や中島社長には本当にお世話になり、勉強させていただいたなと率直に感謝しています。まだまだ至らない経営者だと思いますが、これからも勉強を続け、成長していきたいと思っています。
-FISソリューションズは今後どのような存在になりたいと考えていますか?
ここ数年、新規のお客さまを増やすよりも今のお客さまを大事にすることに力を入れてきたのですが、今期からもう1度新規のお客さまときちんと向き合おうということで動いています。
社員を大切にして長く働いてもらえる会社を作ろうと取り組んできた成果が出てきたので、育った人員でしっかりとサービス提供できれば純増できると思っています。フォーバルの価値をより多くの会社に提供できる姿を作り、グループに大きく貢献できる存在になりたいと思っています。
兄弟会社との向き合い方
弊社と同じようにM&Aでグループに参画した兄弟会社と切磋琢磨できることもフォーバルグループに参加して良かったと思える点です。
取引先との向き合い方
保険代理店業を全国で展開している会社です。
お客さまをご紹介いただいたり、仕事以外でもゴルフや釣りなどをご一緒させてもらったり、いろいろお付き合いいただき大変感謝しています。
事務所も隣にあり、弊社としては今後お互いの事業のシナジーを活用して、もっとご一緒に展開できればと考えています。
フォーキャストさんは大阪にある情報通信コンサルティングの会社です。最近はコロナで会えていませんが、半年に1度くらいは一緒に酒を飲み、いろんな話をする中で、フォーキャストさんの良いところを真似して仕事に活かしたりもしていました。いつもリスペクトしていますし、非常に感謝しています。
社会貢献との向き合い方
弊社では寄付活動を行っています。独自にボランティア活動などで支援することも考えたのですが、その分野で知見のある方々に寄付をして、その資金をうまく活用していただく方が効果的だと考え、寄付を定期的に行うようにしています。
地域社会・地球環境との向き合い方
シーセフはカンボジアなど発展途上国の子どもたちの教育支援をする国際NGO団体で、フォーバルの大久保が創設しました。社会貢献したいと思い立ち、最初に寄付をおこなったのがシーセフでした。実は寄付をすると言ったとき大久保から「お前のところはまだ赤字だろう。寄付させてやらん」と断られたんですね。その後、大久保からCRM(Cause Related Marketing)という、お金を直接寄付するのではなくて、商品が売れたとき売り上げの一部が寄付される仕組みがあることを教えていただいた。例えば弊社の通信回線を使っていただくとそのうちの一部が寄付され発展途上国の子どもたちの教育支援につながるという仕組みです。弊社では現在この方法を使っていくつかの団体に定期的に寄付をしています。
またシーセフではカンボジアの未来を担う子どもたちに質の高い教育を届けるため、現地に幼少中一貫校のシーセフリーダーズアカデミーを順次開校していて、2019年に小学部が開校して落成式があったんですね。私は大事な会議があって、そのとき行けなかったのですが、現在の学校の状況はどうなのか、ぜひ現地で視察できる機会を作りたいと思っています。
テラ・ルネッサンスはアフリカの元少年兵の自立支援や紛争地での平和教育、カンボジアでの地雷撤去などに取り組む団体で、私はTSC東京という法人サポーターの会で世話人をさせてもらっています。以前、創設者の鬼丸さんと経営の勉強会でご一緒したことがあったのですけれど、その打ち上げで、「この11人がいれば世界平和を達成できるんだ」といったことをおっしゃって、急に涙されたことがありました。そのとき私も「世界平和を達成できる」って思ったんですよね。それ以降、私も「人生の目標は世界平和です」と宣言するようになりました。世界の動きに非常に敏感で、経済や経営の動きに関してもいろいろな知見を持っていらっしゃるので、鬼丸さんの話はとても刺激になり、いつもありがたく伺っています。鬼丸さんにはサポーターに期待することをどんどん教えて欲しいと思っています。
東日本大震災の被災地支援と動物支援をしているNPOで、弊社では定期的に寄付をしています。伝説塾の國武栄治さんが設立した団体で、現在私は理事を拝命しています。この団体の支援金の集め方はユニークで、飲み会を開いて実質4000円かかる場合は8000円の会費にするとか、ゴルフコンペで1万円のプレーフィーだけど2万円の会費にするとか、とにかく楽しみながら支援することを徹底している。やり方としてとてもいいと思います。東北復興に関しては何かしなくてはと思いつつ募金する程度だったのですが、今いろいろ関わらせてもらって非常にありがたいなと思っています。
これは会社としても個人としても関わらせていただいている地域への貢献です。山梨県の都留(つる)市は私の母校・都留文科大学がある場所です。大学時代、子供児童文化研究部で子どもと遊ぶ活動をしていて、いまだにその地域の子ども祭りの実行委員や、子ども食堂の支援をしています。
卒業後しばらく都留の活動からは離れていたんですけれど、当時その活動をご一緒した岩間さんがその後も活動を継続していて、私は5年前くらいから再び都留での活動に関わるようになりました。岩間さんがいなかったら、もう1度関わることはできなかったと思います。とても感謝しています。
未来に向けて
中小企業の活力が日本そして世界を元気にする
私は今47歳ですが、30年ぐらいはまだ頑張れるかなと思っています。今後30年、日本はさらに少子高齢化が進み、必ず労働人口減少の危機に直面します。今後も活力ある日本でいるためにはIT技術を活用しながら、年齢、性別、国籍に関係なく誰でも働ける環境を作っていくことが必要だと思っています。日本企業の99%以上が中小企業です。弊社は中小企業へ向けたITを活用したコンサルティングを得意としているので、活力ある日本を作っていくことに貢献できると思っています。
また30年後、アジア諸国でも高齢化問題が深刻になると予測されています。日本でモデルができていればそのとき諸外国の手本にもなれる。今後30年で活力ある中小企業を創出する仕組みを作るのは私の仕事で、30年後それをアジアで広げていくのは君たちの仕事だからね、と若い世代に話をしています。今から未来を託す準備が始まっているのです。
ライター 関谷 ゆりこ